一あるいはいかにして少年は難しい顔をするようになったか一
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砂の女
評価:
新潮社
¥ 500
(1981-02)
安部公房著、20カ国語以上に翻訳された20世紀が誇る名作。
砂の穴のなかで暮らす女のもとに閉じ込められた男は、どうにか脱出を試みるが…。
とにかく話の筋がよくできていて、読み始めると一気に引き込まれる。
スタイル的にはじめじめした村上春樹みたいな感じ。比喩の的確さは相当です。
「罪がなければ、逃げるたのしみもない」
非現実のなかに浮き上がる現実。人間の本質的な自由とはなにか?
読むひとによっては気持ち悪いだけかもしれないけど、ぜひ一読をおすすめ!
| | 01:53 | comments(0) | trackbacks(0) |
ぼくが電話をかけている場所
村上春樹訳、レイモンド・カーヴァーの短編集。
どこにでもある日常がふとした瞬間に変化していくような物語の数々。
とびとびの行間がじつに絶妙で、想像力を刺激されるゆるやかな世界観です。
狙いすましたオチなんかなくても短編小説は成り立つんだなあと思いました。
盲人に建物の様子がどんなか説明しようとする『大聖堂』という一編が特に秀逸。
| | 01:54 | comments(0) | trackbacks(0) |
トレインスポッティング
ブッカー賞にも選出されたアーヴィン・ウェルシュのデビュー作。
ドラッグとアルコールとセックスと暴力。人生を選ばない若者たちの群像劇。
約500ページの長編だけど、短編の積み重ねで構成されていて読みやすい。
各章ごとに語り手が変わり、登場人物の内面描写へのアプローチが秀逸です。
おおげさで皮肉っぽくて自嘲気味なブリティッシュ・テイストが全開!
映画もいいけど、小説もいいね。いままでで一番さくさく読めたかも。
| | 02:22 | comments(0) | trackbacks(0) |
黒猫・黄金虫
評価:
集英社
¥ 540
(1992-05)
例によって、画像は集英社だけど読んだのは新潮文庫。

* * *

アメリカ近代文学の起点であり、フランス象徴派から推理小説にいたるまで後世に多大な影響を与えたポーの短編集。殺した黒猫の呪いを受けて堕落する男の病的な心情を、戦慄に満ちた文章で象徴化した『黒猫』、一匹の珍種の虫の発見によって怪奇的な推理が引き起されていく『黄金虫』など、計算された小説の美的効果を伝える短編5篇を収録。

名前だけは有名なエドガー・アラン・ポー。ポーは短編に統一感のようなものを求めていたひとらしいので、「まずはオチがあってこそ」という観点で短編をつくっていたみたいですね。たしかに後半の1/3はおもしろい。『黒猫』とか『アッシャー家の崩壊』なんかは、ヒタヒタした怖い雰囲気がいいです。悪夢的な美学。

『ウィリアム・ウィルソン』は、二重人格と良心の呵責が物語のテーマ。ポール・オースターの『シティ・オブ・グラス』の登場人物に「ウィリアム・ウィルソン」という名前が引用されていたことを思いだして、個人的になんとなく納得したんですが、この短編だけやたら日本語訳が読みづらくて話があんまりあたまに入ってこなかった。音引きみたいなやつ(ダッシュ?)がすごく多くてほんと読みづらい。

すらすら読めたのは『メールストロムの旋渦』と『黄金虫』。このふたつは読んでて普通にわくわくした。よくできた短編だと思います。全体的に特に目新しい感動はなかったけれども、教養としては一応読んでおいて良かったかな、という感じ。
| | 23:55 | comments(0) | trackbacks(0) |
シティ・オヴ・グラス
評価:
ポール・オースター
角川書店
¥ 441
(1993-11)
孤独な作家のもとにかかってきた、一本の間違い電話。それはある男を尾行してほしいという依頼だった。作家のクィンはほんの好奇心から探偵になりすまし、男のあとをつけはじめるが、事件は一向になにも起こらない…。アメリカ現代作家の第一人者、ポール・オースターのデビュー作であり、『幽霊たち』『鍵のかかった部屋』と続く、ニューヨーク三部作の第一作。

これはネタバレなのかもしれないけど、事件はたしかに何も起こらない。けれど、「たしかに何かが起こったのだ」というこの感覚。はじめてオースターさんが日本に紹介されたとき、“いっぷう変わった探偵ミステリー”というレッテルを貼られたそうだけど、これほど純文学として刺激的な物語もそうそうないと思う。『幽霊たち』のあとがきで訳者の柴田元幸さんは、ニューヨーク三部作に共通する雰囲気を「登場人物が“どこでもない場所”で“誰でもない人間”になっていく状況」と述べられていますが、まさにそのとおり。

この作品の物語をかたちづくるものは言葉と思考である、とぼくは思う。一通りの筋とわりと意外なオチではあるけれど、読み手は登場人物の言葉と思考を通して、間接的に精神の自由を体感することができる。そこに言葉という固定観念はなく、なにを意味するのか、正しいのか、または存在するのか、「自分のあたまで思考する」ことを余儀なくさせられる。事件は一向に起こらない。しかし、その過程を体感する前と後では、たしかに何かがすこし違っている。それは優れた小説だけが持つひとつの大きな力ではないかと、個人的には思います。

ピーター・スティルマンの独白は夢に出てくるくらい面白かった。オースターさんの書く英語は簡明で無駄がなく、知的で詩的で音楽的な文章だということで、英語力向上のためぜひ原文にチャレンジしてみたい。たしか朗読とかもやってますよね、このひと。リスニングを鍛えないと。
| | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0) |
蜘蛛の糸・杜子春
評価:
芥川 龍之介
新潮社
¥ 300
(1968-11)
芥川がとまらない。

* * *

自分だけが助かりたいというエゴイズムのために、またもや地獄に落ちる『蜘蛛の糸』。大金持ちになることに愛想が尽き、平凡な人間として生きる幸福を見出す『杜子春』など、洒脱なユーモアとやさしい語り口で書かれた少年少女のための健全な作品集。

『蜘蛛の糸』といえば、小学生くらいの頃に「まんが日本昔話」で見た記憶があります。たしか日曜の朝とかにやってましたよね。小説はたった5ページしかないけれど、すっきりと簡潔でわかりやすく、やっぱりおもしろい。この作品集は特に若いひと向けなので、どれも寓話的で読み手を飽きさせないつくりになっています。ぽんぽん読めて気持ちいい。

『猿蟹合戦』は有名な童話のパロディで、猿に仕返しをしたカニたちはその後警察に捕まって、主犯のカニは死刑、共犯の臼・蜂・卵(栗)は無期懲役になったという社会風刺の戯作。こういうのをまじめに作っちゃうあたりがいいですよね。

どれもおもしろいけど、真っ白な犬が真っ黒な犬になってしまう『白』という話が好い感じ。話の筋はよくある風だけど、狙ってる感じが楽しいし、ちょっと感動する。そのなんていうか、“楽しいし、ちょっと感動”というのが、この作品集での芥川テイストなのかなと、思わなくもない。
| | 16:03 | comments(0) | trackbacks(0) |
河童・或阿呆の一生
評価:
芥川 竜之介
岩波書店
¥ 399
(2003-10-17)
例によって新潮文庫は画像がないので、岩波版。

* * *

自らの死を予感していた芥川最晩年の作品を集めた短編集。いずれも鬼気迫る心情を吐露する極めて病的なものだが、研ぎ澄まされた感覚が冴え渡り芸術的な完成度は高い。出産、恋愛、宗教などを饒舌に風刺した『河童』、激しい強迫観念と神経の戦慄に満ちた『歯車』など、6編を収録。

いや、もうとにかく『河童』を大プッシュ。これはほんとうにおもしろい。日本の古典文学に対する考え方が芯から変わるくらいおもしろいです。精神病患者が見た河童の国のお話。サブタイトルに「どうかKappaと発音して下さい。」と書いてあって、最初はなんだよそれって思ってたけど、読み終わってみると納得。「Quappa」じゃないんだ。

ほかの作品では、ほとんど病的に神経が昂っている『歯車』がすごい。ここまで追い詰められたら自殺するしかないという極限状態。生ける地獄に芥川は何を見たのか、この作品に記されている。それから10ページにも満たない『蜃気楼』という作品は、現実と虚像がものすごく微妙に絡まっていて、この歪んだ感じがなんともいえず個人的に好きです。

とりあえず、だまされたと思って『河童』を一度ごらんください。ほんと、おもしろいですQuala…。
| | 00:39 | comments(0) | trackbacks(0) |
パーク・ライフ
評価:
吉田 修一
文藝春秋
¥ 410
(2004-10)
公園にひとりで座っていると、あなたはには何が見えますか? スターバックスのコーヒーを片手に、春風に乱れる髪を押さえていたのは、地下鉄でぼくが話しかけてしまった女だった。なんとなく見えていた景色がせつないほどリアルに動きはじめる。日比谷公園を舞台に、男と女の微妙な距離感を描き、芥川賞を受賞した傑作小説。

これはどうやら好き嫌いがまっぷたつに割れる作品らしく、「なんでこんなのが芥川賞?」というひともいれば「この感性は素晴らしい!」となるひともいる。ぼくの意見としては、後者に近いです。とにかく文章の表現がおもしろい。平凡な日常を切り取って、現代人のストレスをうまく緩和させています。ストーリーうんぬんよりも感覚的に楽しむ作品だと思う。

もうひとつ収録の『flowers』は花ネタがちょっとしつこすぎるというか、狙いすぎてる感じがしました。これを読むと『パーク・ライフ』も俗っぽい感じが強くなる。ファッションやら何やらの表現がなんとなく嫌みっぽくて、嫌らしくしないためのユーモアが逆に腹立たしくなるような。読んでるうちはいいんだけど、距離を置いてみると案外微妙っていう。まあ読んでいる時間を楽しく過ごさせれば、作家的には一応成功だと思うんですけど。

しかし自分のなかの日本人作家は村上春樹以降バージョン・アップされていなかったので、久しぶりに最近の日本人作家の作品を読んで、こんなひともちゃんと出てきてるんだなあとか思ってしまった。やっぱり同時代の作家も読まなきゃだめか。でもなあ、それよりも先にまず古典をクリアしなきゃいけない気がする。でもなあ…。
| | 01:43 | comments(2) | trackbacks(0) |
脂肪の塊・テリエ館
評価:
ギー・ド モーパッサン
岩波書店
¥ 420
(2004-03)
新潮文庫の古典はほとんどAmazonに画像がないので、仕方なく岩波版です。新潮版には『テリエ館』も収録されています。

* * *

プロシア軍を避けてルーアンの町を出た馬車に、“脂肪の塊”とあだ名される可憐な娼婦がいた。空腹な金持たちは彼女の弁当を分けてもらうが、敵の士官が彼女に目をつけて一行の出発を阻むと、彼女を犠牲にする陰謀を巡らす一ブルジョア批判、女性の哀れへの共感、人間の好色さを描いて賞賛を浴びた『脂肪の塊』。同じく、純粋で陽気な娼婦たちと彼らを巡る人間を活写した『テリエ館』。

タイトルからして堅っ苦しそうな予感がしていたわりには、ユーモアの利いた読みやすい文体で、わかりやすくおもしろい展開の助けもあって普通に楽しめました。“脂肪の塊”なんていうとちょっとグロテスクですけど、ブール・ド・スイフという低俗階級の太っちょな女性の価値観をめぐって、上流階級のひとびとが我が身に都合良く彼女を利用していく様をブラックに風刺しています。心理、情景ともにこまやかに行き届いた描写力も見事ですし、力みすぎず緩すぎずというさじ加減もいい感じ。中編としての構成もよくまとまっている名作です。締めの二行は特にあとを引きますね。

『テリエ館』の方は『脂肪の塊』と同じ娼婦が主役でありながら、設定がまったく逆になっている作品。つまり娼婦たちが上流階級の男たちを手玉にとり、ある場合には崇められるような存在です。そこのところは訳者の解説に詳しくありますが、こちらの方が終わりかたはポジティヴな感じですね。個人的には『脂肪の塊』の方が好みなんですが。

モーパッサンといえば「ウイイレのマスターリーグに現れる変な名前の成長キャラ」として、なにげない知名度を誇っている。しかし写真を見る限り、フットボールというよりも無愛想なバーのマスターのように、立派な口ひげをたくわえた風貌。時代が時代だけにムッシューである。
| | 02:31 | comments(2) | trackbacks(0) |
水いらず
評価:
サルトル
新潮社
¥ 620
(1984-01)
性の問題をはなはだ不気味な粘液的なものとして描いて、実存主義文学の出発点に位する表題作、スペイン内乱を舞台に実存哲学のいわゆる限界状況を捉えた『壁』、実存を真正面から眺めようとしない人々の悲喜劇をテーマにした『部屋』、犯罪による人間的条件の拒否を扱った『エロストラート』、無限の可能性を秘めて生れた人間の宿命を描いた『一指導者の幼年時代』を収録。

ノーベル文学賞に指名されるも辞退したサルトル先生。「いかなる人間でも生きながら神格化されるには値しない」のだそうです。んー、さすがですね。サルトルといえば実存主義の代表作家ですが、そもそもこのひとは哲学者なので、考えていることがまた理屈っぽくて難しい。

「それがあるところのものであり、あらぬところのものであらぬもの」という“即自存在”と、「それがあるところのものであらず、それがあらぬところのものであるもの」という“対自存在”。なんかもう謎かけみたいなんですけど、要するに、その場で目に見えるものは“即自”であり、見えないもの(過ぎ去ったもの、違う場所にあるもの)は“対自”である、ということですかね。つまり“対自”とは「無」の存在であると。違ってたら申し訳ないけども。

全体的に読むのがしんどい感じだったんですが、『壁』は普通におもしろかった。カミュの『異邦人』を思いだすような不条理さが感じられて、追い込まれた人間の心理描写もすごかったけど、「笑って笑って笑いこけた」のオチがよかったです。どの短編にもそれなりにおもしろさはあるんですが、興ざめさせずに最後まで読ませる力があったのは『壁』だけだったと思う。30ページくらいで短いですし。あとは唯一の中編『一指導者の幼年時代』が意外と興味深かった。デカルトの「我思う、ゆえに我あり」的な内容で、デカダンぽい雰囲気に魅力があります。

やっぱり小説としておもしろくなければ後世に残っていないはずなので、逆に言えば、過去の時代から残されている小説はすべてなんらかの価値があるはずなので、同時代の価値観と並行して読んでいかねば。多少しんどいけれど。
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